曲面のグラスに下絵が写せない。展開図をAIに作らせて分かったこと

最近、グラスに彫刻(いわゆるグラスリッツェン)にチャレンジをしている。

彫る前に下絵をグラスに写す工程の際に、原寸でプリントした紙をグラスの内側に入れ、外から透けて見える線を油性ペンでなぞっているのだが、円柱のグラスならこの紙は簡単に作れる。
ただ、周囲の長さを測って長方形に切ればいいだけなので簡単だ。

問題は、ビール瓶のようにくびれた形だ。
上下で直径が違い、しかも曲線を描いている。展開図が一気に複雑になる。

そこで、定規と一緒に撮った写真をClaudeとChatGPTの両方に、同じ条件で図面を作らせてみた。

結論から書く。
図面としてはClaudeのほうが実用に近かった。
ただし最終的に、展開図という方法自体が成立しないと分かった。


目次

何を渡したか

手順はこう。

1. 彫刻用の展開図の作り方を聞く
2. 定規と一緒に撮った写真を渡す
3. 両方から「写真だけでは正確な展開図は作れない」と回答が返る
4. 全高136mm・飲み口直径84.48mm を伝える
5. その2点を基準に、展開図を作らせる

条件は完全に同じだ。

そして3の時点で、両方とも「写真だけでは無理」と正しく判断している。


出てきたもの

A|Claude

A4横4ページのPDF。(jpg変換済み)

高さ方向を6つの帯に分割し、それぞれを円錐台として展開している。

そして、なぜ分割したかが図面に書かれていた。

■ 1枚もので巻けない理由(重要)

このグラスは母線(縦の輪郭)が直線ではなくS字カーブのため、
円錐でも円筒でもなく「可展面」ではありません。

1枚の紙で最小誤差に近似しても周長のズレは最大 約19mm(約11%)となり、
必ずシワ・浮きが出ます。

そこで高さ方向を6つの帯(A〜F)に分け、
各帯を「円錐台」として厳密に展開しました。
各帯の周長誤差は最大でも約1.7mm(0.7%以下)です。

そして各帯に「のりしろ10mm」が付いていた。

B|ChatGPT

A4横1ページのPDF。(jpg変換済み) 12段の測定値を記載したもの。

注記はこうだった。

This is an experimental approximation; lens/perspective error remains.

Cut the outer line and wrap it around the glass.
Mark where it wrinkles, overlaps, floats, or falls short.

「実験的な近似」と明記し、「巻いてシワや浮きが出る場所に印をつけろ」と指示している。

図面ではなく、検証用のテストピースだった。


巻いた結果

Claudの図面
ChatGPTの図面

Aは、のりしろを含めてぎりぎり足りた。 上下でもほぼ崩れなかった。
Bは、まったく合わなかった。 シワが寄るという以前に、1枚ものなので曲面に沿わない。

Claudeが「1枚では巻けない」と説明した通りの結果になった。


計算精度に差はなかった

両方の出力を検算した。

高さ直径記載の円周直径×π差
A136mmφ84.48265.4265.40.00
A100mmφ75.75238.0238.00.02
B56.1mmφ48.3151.7151.70.04
B115.4mmφ67.7212.7212.70.01

小数点以下まで合っている。

差が出たのは、設計の方針だ。

A:6分割 + のりしろ → 曲面に沿う
B:1枚もの → 浮く


なぜ曲面のグラスでは下絵が合わないのか

この作業は、紙をグラスの内側に入れて、外から書き写す。
円柱グラスなら、丸めた紙が弾力で内側に張り付くので、ある程度きれいに写せる。
曲面グラスでは、それができない。

理由は2つある。

1枚では、そもそも沿わない

くびれた形に、平らな紙は貼れない。

地球儀を平らな地図にすると、必ずどこかが伸びる。
それと同じことが起きる

分割して貼り合わせても、入らない

6枚を貼り合わせれば、グラスの形をした筒になる。
だから理屈の上ではこれが正解なのだが
飲み口が小さい場合、手が入らない・・・


試そうとした6つの方法と、その結果

検討した順に書く。

方法結果
マスキングシートを切り抜くサンドブラストの手法だがリューターで行う場合、ダイヤモンドビットで切り抜き部分がずれる
シートの上から削るビットに絡む
水転写デカール削る振動で剥がれるし、絡む
内側から投影する光源が内部にあるため放射状に広がり、歪む
伸縮フィルムを内側に貼る飲み口が狭く、内側で作業できない
外側にカーボン紙を貼ってなぞる平面なのでシワが寄る。デザイン紙も分割が必要

削る面に何かを貼ることは、リューターを使う以上できない。
そして平面の紙は、内側でも外側でも曲面に沿わない。


現時点の結論

展開図は、成立しない。
また、「格子で分割して貼る」方法も、歪みが避けられない。
平面のデザインを曲面に貼る以上、どこかが必ず余る。分割を細かくしてもこの問題は消えない。

結局、「直接描く」これが最適解だとわかった。

1. デザインをAIで作る
2. プリントアウトして、手元に置く
3. グラスを見ながら、油性ペンで直接描く
4. 除光液で消せるので、納得いくまで調整
5. 削る

まぁ一発勝負じゃないし「妥協点だろう」と心の中で呟きながら
自分の中の正義はいつもこう言う。

「めんどくさがるな」


よくある質問

AIのOCR性能に差があるのですか

今回の検証では、計算精度に差はなかった。 円周の計算は、両方とも小数点以下まで正確だったが、差が出たのは展開図をどう設計するかという方針の部分だ。

なぜ1枚では巻けないのですか

輪郭が曲線を描く形状は「可展面」ではないため。 円柱や円錐は1枚の紙で巻けるが、S字にくびれた形は無理がある。Claudeの図面には「1枚の紙で最小誤差に近似しても周長のズレは最大 約19mm(約11%)」と記載されていた。地球儀を平らな地図にすると必ず歪むのと、同じ理屈になる。

結局、AIは使えなかったということですか

そうではない。計算と理論の部分は、正確にやってくれた。 「1枚では巻けない」という判断と、その理由の説明も正しかった。分からなかったのは、作った紙が物理的にグラスに入るかどうかだ。 そこは自分で確認する必要がある。

格子状に細かく分割して貼れば解決しませんか

貼ることはできるが、歪みが残る。 平面のデザインを曲面に貼る以上、どこかが必ず余る。分割を細かくすれば1枚あたりの歪みは減るが、枚数が増えてずれが蓄積する。そして重なりを作ると、その分デザインが圧縮される。


まとめ

  • 同じ写真と寸法を渡して、ClaudeとChatGPTに展開図を作らせた
  • 巻いた結果、Claudeは何とか合い、ChatGPTは合わなかった
  • 円周の計算精度は、両方とも正確だった
  • 差が出たのは「分割したか」「のりしろがあるか」
  • 曲面グラスは1枚では巻けない(可展面ではないため)
  • 分割して貼り合わせると筒になるが、飲み口より広く入らない
  • 削る面にシートは貼れない(ビットに絡む・剥がれる)
  • 格子状に分割して貼る案も出たが、歪みが避けられない
  • 最終的に、グラスを見ながら油性ペンで直接描くことにした
  • 除光液で消せるので、一発勝負ではなくなった
  • ただし「正確に転写する」という目的は達成できていない


著者

瑞岡 大河

AIエンジニア系資格の取得後、企業内での生成AIレクチャーや個人向けAI活用支援に携わる。

著書『「自分には何もない」から始めるAI時代の副業設計』では、自己理解とAIを使って自分に無理のない副業を作る方法を体系化。

現在はCodex / Claude Codeを活用したGrowth OSを運用しながら、個人向けの自分サイズの副業づくりと、福岡・九州の中小企業向けAI業務改善を行っている。


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